視聴者は有権者(2/2)
2009年 10月 30日
(前半)
ご存知のように、このところテレビ番組の政治ものは電話やファックスによる視聴者(有権者)の政治に対する意見調査という方法がヤタラと多く用いられます。そして支持率が下がろうもんなら、テレビに招かれた評論家と称する輩が一斉に政府攻撃をやる、チョット見りゃ世論を政治に反映させるために歓迎すべきことのように思われる向きも多いでしょう。しかしこれは極めて危険なんですなあ‥‥。
よく考えてみて下さい。現在の発達した通信技術をもってすりゃ、有権者(視聴者)がそれぞれの法案について押ボタン式に賛否を出し、その集計を即座に出すなんてことはそれほど難しい話じゃありません。しかしこれを実行したらいかがなことになるかといえば、税金はすべて無税になり、福祉は一層要求され、結果として国家が破綻するのに時間はかかりません。ご理解戴けると思いますが、民主々義制度において世論は不可欠なものの一つですが、世論をそのまま忠実に反映した政治を運用しようとするなら、議会なんてものは不要なことになるんです。
そうなれば有権者はテレビをみてもろもろの政治的な動きに情緒的に反応し、結果として内外の何れの分野でも整合性のある政策はまったく実現不可能になってしまうんです。従って代表として一度選ばれた人の地位はある程度の期間保障されねばならず、そうでなければ政治の情緒化は政治を更に不安定なものにしてしまいます。
逆に政治指導者の地位がある程度保障されていれば、テレビの政治批判も政治の活性化に結びつくんですが、今の日本はこれらの根拠をまったく理解していない人々の軽薄な発言によって一層政治が不安定になりつつあるよう思われます。
(平成6年1月)
視聴者は有権者
異論III 麻生太郎(平成10年2月25日麻生太郎事務所発行)より抜粋引用
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