アジア人は、フロントランナーとなって取り組まなければ
2009年 06月 11日
わたくしの楽観論は、誤解なきよう申し上げますが、今後何も問題が起きないという立場に立つものではありません。面白すぎて切る場所がわかりません…… 皆様の好きな麻生総理の論文・スピーチを伺ってみたかったのですが、ブログランキングのアンケートだと選択肢が8つしかなくて(汗) しかもタイトルが長さ制限で跳ねられて(汗)
社会の高齢化は日本を先頭に、韓国や、じきに中国でも大問題となるでしょう。しかし、社会の高齢化自体は、悪い話でも何でもありません。ここは日本が、アジアの先頭を切って、成熟し、活力ある高齢化社会を実現し、この地域全体のモデルを示していくべきでしょう。
成長のため欠かせない食糧、エネルギーの限界をどう突破するか、アジアが人類的課題に直面することも、火を見るより明らかです。半面、自然環境の悪化を放置できるはずはなく、ここでもわれわれアジア人は、フロントランナーとなって取り組まなければなりません。
しかしわたくしが、それにもかかわらず楽観論者だというのは、今申しましたネットワークに大きな信を置いているからにほかなりません。平たく言いますなら、「3人寄れば文殊の知恵」かもしれないが、10人寄れば、45通り、20人なら、190通りの知恵が発揮できるのです。
言ってみれば、アジアの「知のネットワーク」に、信頼を託そうとする発想です。
公害克服のためには、エネルギー利用の効率化を本気になって図らないといけません。ハイブリッド・カーを引き合いに出すまでもなく、この点では我が日本に一日の長があります。エネルギーの安定供給や効率的な利用について、政策面、技術面などで協力を深めるネットワークができれば、日本は間違いなく、そこでリーダーとして活躍する資格があります。
それから東アジアの経済は、貿易額の半分以上が地域の中で行われているという、実に緊密な状態にあります。太いネットワークがそこにあるので、これを文字通り、われも得する、彼も得するという、互恵のネットワークにしないといけないわけです。
あえて細かいことを言いますが、その基盤として、これからぜひ必要になるのは、地域全体できちんとしたデータ、統計を整備し、理論や政策の面で精緻な分析、提言を行う機能です。特に、わたくしは、ASEAN+3ができた9年前のことですが、経済企画庁の長官をしていたので、データや統計がいかに大切かが骨身に染みております。
統計の整備とか、「知のネットワーク」の申し子となり得るようなアジア太平洋地域のシンクタンク機能作りでも、日本はリーダーの1国になりたいものです。
半面、日本は例えば「平和の定着と国づくり」といった面ですと、専門家の数などがまだまだ足りません。今国会冒頭の外交演説で、「平和の維持・構築、紛争の再発防止といった活動を担う専門的人材を、アジアにおいて育成」したいと、わたくし自身申し上げました。*1
アジアでは、カンボジア、東ティモール、アチェ、ミンダナオなどで、わが日本も含め、平和構築の経験を積んできました。国連のPKOに積極的に貢献している国も日本だけではありません。こうした経験を活かしながら、広く世界に知恵とノウハウを求め、平和構築のために活躍できる人材をこのアジアで育成する仕組みをつくっていかないといけません。いま、このアイデアについてアジア各国と議論を深める機会を近々設けられないかと思っています。
ともあれお互いが、強みを分かちあい、弱いところを補いあうならば、解けない難問などないと信じましょう。
難しい課題に他人(ひと)より先にぶつかる国という意味で、わたくしは一度、日本を「thought leader」になぞらえたことがあります。しかしこう考えてみると、知のネットワークが縦横に張り巡らされるだろう近未来のアジアは、世界全体に対しゆうに一個のthought leaderたり得ると、わたくしには確信に近いものがあります。
外務省/平成18年5月26日「ネットワーク型アジア」の未来を構想する 抜粋,強調引用者
*1
外務省/平成18年8月29日 平和構築者の「寺子屋」をつくります
こちらで配布中